私は本になりたい

本になりたい男のブログです

僕とSAKANAMONの運命的な出会い

最近SAKANAMONというロックバンドにハマっています。

 

僕がSAKANAMONを知ったのは、とあるニコニコ動画の動画がきっかけです。

YouTube版の動画を以下に貼っておきます。

 

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ぼっち・ざ・ろっく」という少し前に流行ったアニメのMAD動画なのですが、ここで使われている「TSUMANNE」という曲にすごくビビッときたんですね。

ちなみに「ぼっち・ざ・ろっく」のストーリーをかなり簡潔に説明すると、陰キャだがギターが超絶上手な女子高生・後藤ひとりがバンドを組んで色々乗り越えていくお話です。

 

こういう疾走感がありつつ、自分の無力さとか、それでもなんとかやっていくひたむきさみたいなものを泥臭く歌ってる曲に惹かれる傾向があります。

 

しばらくはこの「TSUMANNE」だけ聞いていたのですが、1曲が刺さったということは他にも刺さる曲があるんじゃないかと思い、Amazon MusicSAKANAMONの曲を漁って聴いてみました。

 

そこで出会ったのが「光の中へ」という曲です。

 

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出だしのギターリフ・疾走感・自分の無力さとひたむきさを歌ったオシャレな歌詞、サビのこぶしを効かせたボーカル、どれもめちゃめちゃカッコよく、僕の好みのど真ん中を突いてきました。

 

しかし、感動はこんなところでは終わりませんでした。

 

「光の中へ」があまりにもいい曲だったので、色々調べてみようと思ってググってみたんです。

すると、検索結果の中になぜか「ぼっち・ざ・ろっく」のニュース記事が出てきました。

 

なんでだろうと不思議に思い、ページを開いてみたんです。

 

すると、なんとこの「光の中へ」という曲、SAKANAMONのギターボーカルの藤本さんが「ぼっち・ざ・ろっく」の中で主人公が所属している「結束バンド」というバンドに提供した曲だったんです!

 

僕が最初に聞いた「光の中へ」はSAKANAMONのセルフカバーだったわけです。

 

自分の好きな2つの違うジャンル(まあ、ロックという点では共通点があるのですが…)のものが、実は繋がっていたこと。これは運命的なものを感じずにはいられません。

 

言ってしまえば、世間一般的にSAKANAMONは「売れてないバンド」です。一方、「ぼっち・ざ・ろっく」はアニメとしてはかなりのヒット作です。

普通ならもっとメジャーどころのバンドにオファーしてもいいところ。

SAKANAMONにオファーを出したところに、アニメスタッフのセンスやロックへのこだわりみたいなものをすごく感じました。

 

また、偶然かもしれませんが、僕がSAKANAMONにハマるきっかけを作ってくれたニコニコのMAD動画の制作者さんの先見の明もすごい。

実際、ニコニコ動画のコメントには「うp主預言者説」というコメントが流れています。

 

さて、結束バンドver.の「光の中へ」はこちら。

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こちらはこちらでSAKANAMONバージョンとはまた違った良さがあります。

どこか泥臭さを感じるSAKANAMONバージョンに対して、いい意味で初々しさや学生バンド感が出てる感じ。

アニメを見てから歌詞を見てみると、主人公の「後藤ひとり」の心情を表した歌詞なんだとわかり、それも感慨深いポイントです。

最近は、SAKANAMONバージョンと結束バンドバージョンの「光の中へ」を交互に聞いています。

ニコニコ動画のこちらのMAD動画もオススメです!

 

www.nicovideo.jp

 

一連の経験を通じて、SAKANAMONとぼっち・ざ・ろっくのことが更に好きになりました。好きなものが増えるというのは、人生を豊かにしてくれますね!

ぼっち・ざ・ろっくはもう一度通して見てみようと思っています。

最後に、SAKANAMONのおすすめの曲をいくつか貼っておきますので、ぜひ一度聞いてみてください!

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「耳読書」に再挑戦してみた

最近、audiobook.jpに登録して、いわゆる「耳読書」に再挑戦しています。

「耳読書」とは、音声化された書籍を耳で聞いて読書することで、AmazonのAudibleや、audiobook.jpのオーディオブックが有名です。

 

僕が「耳読書」に再挑戦するきっかけとなったのが、こちらの本です。

著者はaudiobook.jpのサービスを提供している株式会社オトバンク代表取締役会長上田渉さんという方です。

Kindle Unlimitedのラインアップに並んでいたので、ザッと眺めてみたらモチベーションを掻き立てられ、audiobook.jpに登録することにしました。(チョロい奴と思わないで下さい…)

 

実は一度「耳読書」を諦めていた

実は僕は少し前にAmazonのaudibleに登録していたことがあります。

 

その時のきっかけは、家事をしながらとか、運動をしながらといった、いわゆる「ながら聞き」ができたら、読書量が増えて最強なんじゃないかという思いからでした。

 

しかし、いざ「ながら聞き」を始めてみると、あくまで僕個人の場合ですが、ついつい目の前の事の方に意識が集中してしまい、話が流れてしまっていて、気づいたら全然聞いていないということがよくありました。

 

また、集中していたとしても、自分のペースで進められないので、聞き逃しや理解できないところが出てきてしまい、なんとなく自分には合わないなと思って退会してしまいました。

 

「耳読書」をサブとして使うという活用法

超効率耳勉強法」では、そんな僕の悩みを解決してくれる方法が紹介されていました。

 

それは、『「耳読書」を目で読む通常の読書のサブ的な位置付けで活用する』というものです。

 

オーディオブック愛好家である星野リゾートの代表の星野佳路さんは、おもに車での移動中にオーディオブックを1.5倍速で聴き、内容的にためになると思った作品や、印象に残るフレーズが出てきた作品は、のちほど紙の本でも購入し、自分が感じたことを該当箇所にメモして、それをあとで見返すという方法を実践しているそうです。

 

これに僕は「なるほど!」と思い、ぜひ自分も実践してみたいなと思いました。

 

僕の読書の時間は主に、職場への移動の電車の中なのですが、行きの電車でまだ眠かったり、帰りの電車で疲れていたりすると、本を読もうという気にならないことが多々あります。特に新しい本や難しい本を読むのには、意外に大きなエネルギーが必要で、なかなか捗らないことがあります。そこで「耳読書」を活用するわけです。

 

「耳読書」は常の読書と違って受動的なので、イヤホンをつけてただ聞いていればよく、始めるための心理的ハードルが低いです。

そこで、聞き逃しがあってもいいので、とにかく全体をザッと聞き、大体の内容を把握した後で、面白そうであれば本を購入して通常の読書をします。

 

「耳読書」の際は、どうせ後で通常の読書をするからということで、「全てを聞き取らなければ!」という強迫観念はなくなります

また、通常の読書の際も、大体の内容がすでに頭に入っているので、心理的なハードルは下がりますし、どの辺りに重要なポイントが書かれているのかもわかります

 

「超効率耳勉強法」にも書かれていたのですが、「耳読書」は通常の読書と比べて、「文字を目で見る」というプロセスが抜けた分だけ、脳にかかる負担が小さく疲れにくいのだそうです。

 

また、さらに一歩進んだ活用法として、本を読みながら「耳読書」をするという方法も紹介されており、こちらもいずれやってみたいと思っています。

 

この記事を読んで、「耳読書」に興味を持っていただいた方は、ぜひ一緒にやってみましょう!「超効率耳勉強法」を一読してみるのもオススメです。著者の「耳読書を世の中に広めよう!」という情熱がすごく、面白い本でした!

 

「他にもこんな使い方があるよ!」という方がいらっしゃったら、教えて頂けると嬉しいです。

 

【読書感想】イノベーションの波は下から襲ってくる【イノベーションのジレンマ】

今回はクレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』について書きたいと思います。

 



Amazonの創業者ジェフ・ベゾスも、Amazonの従業員に本書を渡して読むことを推奨しているのだとか。

 

余談ですが、令和4年度の中小企業診断士一次試験では、本書の内容から一問出題されていましたね。

 

どんな本なの?

この本は、すでに成功を収めた実績ある企業がなぜ、新しいイノベーションの波に乗れずに失敗するのか、その理由を豊富な事例をもとに解き明かした本です。

 

一見お固いビジネス書なのですが、割と新しめの事例が豊富で、文体も読みやすく、非常に面白くてどんどん読み進めてしまいました。朝の通勤電車の中で集中しすぎて、一駅乗り過ごしたくらいです。

 

こんな人にオススメ!

  • 新規事業開発に携わっている人
  • 新興企業や中小企業から大企業を倒してやろうという野心を持っている人

この本の重要ポイント

 

 

  • 破壊的イノベーションは、初めは既存製品より性能が低いことが多いため、既存市場では受け入れられず、ニッチな下位市場で受け入れられる

 

  • 下位市場の顧客に対応するうちに、性能が向上し、上位市場の顧客を侵食するようになる

 

  • 上位市場の顧客にも小型、安い、小回りがきくなどの新しい価値基準が認められ始め、大きなシェアをとるようになる

 

  • 実績ある企業は既存顧客のニーズや、間接費の大きいコスト構造、組織文化などに縛られ、下位市場には入り込めない

 

  • 実績ある企業が下位市場に乗り込み、破壊的イノベーションを起こすためには、買収やスピンアウトなどによって、下位市場の規模に適した規模の組織を別に作り、任せる必要がある。また、その際は自社の価値基準を持ち込んではいけない

 

本書を読んで

本書の中に次のような一節があります。

ある特性に対して求められる性能レベルが達成されると、顧客は特性がさらに向上しても価格プレミアムを払おうとしなくなり、市場は飽和状態に達したことを示す。このように、性能の供給過剰は競争基盤を変化させ、顧客が複数の製品を比較して選択する際の基準は、まだ市場の需要が満たされていない特性へと移る。

 

簡単に言うと、オーバースペックに対して顧客はお金を払わないよ、オーバースペックが度を超えると顧客は新しい評価基準で評価するようになるよ、ということ。

 

この一節を読んで僕が最初に思い浮かべたのは、スマホのカメラでした。

 

一時期どのスマホも、こぞってカメラの画素数を上げてそれを過度にアピールしていたような気がします。

 

でも僕のような写真にそこまでこだわりがなく、ある程度綺麗に映ればいいじゃんって思ってる人にとっては、それって「どうでもいいこと」ですよね?

 

カメラが何百万画素だからって、そこに対して高いお金は払いたくないわけです。

 

それならある程度の画素数で、価格も安くて、小さくて持ちやすいiPhone SEとかでいいや!っていう層が出てきます。実際私もそうでした笑

 

このことは、新製品を考える上で非常に重要な考え方だと思いますし、僕も「なるほどなぁ」と読みながら深く頷いた部分です。

 

本書は実績ある企業がなぜ失敗するのかという、大企業側の視点から書かれています。

 

しかし、逆に考えると、中小企業が実績ある大企業に勝つためには、顧客に新しい価値基準を提供する必要があり、大企業がやりたくないこと(市場が小さくて旨みがない、埋没コストに縛られる)に取り組んでいくことが重要なのではないでしょうか?

 

全体を通して学ぶことが多く、すごく納得感のある本でした!

 

 

 

【書評】資本主義とは何なのか?【武器としての「資本論」】

今回は白井聡さんの書いた『武器としての「資本論」』をご紹介します。

 

以前このブログでもご紹介した、齋藤幸平さんの『人新世の「資本論」』を読んで以来、「資本論」をもっと理解したいなと思っていました。
そこで、原著の解説本を1冊購入したのですが、これがまた難しい!
Amazonのレビューでは「わかりやすい!」という声がたくさん書かれていたのですが、私にとってはまだレベルが高かったようです・・・。
そんな中で見つけたのがこの本でした。

 

どんな本なの?

本書は、マルクスの「資本論」について、著者独自の解釈や身近な事例などを用いつつ、わかりやすく解説してくれている本です。
著者自身が書いているように、「資本論」をはじめから順を追って説明するのではなく、現代において特に重要な概念に絞って説明してくれているので、初めて「資本論」と接する方でもとっつきやすい内容になっています。

こんな人にオススメ!

本書は次のような方にオススメです。

心に響いたポイント

では、特に本書で心に響いたポイントをご紹介していきます!

イノベーションは人を幸せにしない!

下の図は、個人的にこのポイントの内容をまとめてみたものです。

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近年ITによって、人間の仕事が奪われるということをよく聞きます。
しかし、産業革命やIT化を経験し、現代は数百年前と比べて格段に生産性が上がっていますが、私たち人間の生活が楽になったかというと、現実にはそうなっていない。毎日通勤電車に揺られて会社に行き、遅くまで残業で仕事をしているわけです。これはなぜでしょうか?

まず、資本主義社会において、資本(または富)はどうやって価値を増殖していくかを考えてみます。
例えば、ある商品を作るのに1万円かかったとします。これを1万円で販売しても、ただの等価交換で価値は増えません。よって価値を増殖させるために資本家は、この商品を最低でも1万1円以上で販売する必要があります。ではなぜ、1万円の価値しかない商品を1万1円以上で販売できるのでしょうか?

マルクスは、労働が剰余価値を生み出しているからだと考えました。
物を生産するためには、生産手段と労働力が必要です。生産手段とは、土地や工場、設備、材料などあらゆるものを含みます。しかし、生産手段は剰余価値を生み出しません。なぜなら、例えば1万円の商品を作るのにかかった5,000円の材料費は、商品の価格の一部に転嫁されるだけなので、ただの等価交換になるからです。土地や工場、設備の購入費用も同じことで、かかった費用がそのまま価格に転嫁されるだけです。

一方、労働力は違います。すべての生産要素の中で唯一剰余価値を生み出せるのが労働力です。端的に言うと、資本家が支払っている賃金以上の労働を労働者にさせることで、剰余価値を生み出しているのです。つまり、労働力の交換価値よりも使用価値が高いということです。

労働のうち、賃金支払い分の価値の労働を必要労働、賃金支払い分を超えた労働を剰余労働といい、剰余労働が剰余価値を生み出します
剰余価値を生み出す方法は2通りあります。ひとつはシンプルに労働時間自体を伸ばす方法で、こうして生まれた剰余価値絶対的剰余価値といいます。しかし、1日は24時間しかない上、労働者も適度に休ませないと、労働力の再生産ができなくなってしまいます。
そこで出てくるのが相対的剰余価値です。相対的剰余価値は、必要労働時間を短縮し、その分を剰余労働時間に充てることで生まれる剰余価値です。つまり、今まで5時間かかっていた作業を3時間でできるようにすることで、2時間分を剰余労働に回すことができるということです。

必要労働時間の短縮に必要なのがイノベーションです。
イノベーションによって生産プロセスを改良し生産性が上がれば、商品を他社よりも安い価格で販売することができ、企業は剰余価値を享受できます。
しかし、相対的剰余価値は一時的なものです。なぜなら、競合他社は模倣によって同じ水準まで価格を下げてくるためです。よって、無限にイノベーション競争が行われることになります。すると、労働の価値はどんどん下がり、最終的には非正規社員外国人労働者で労働力を賄うようになっていきます

マルクスは次のように述べています。

労働時間短縮のためのもっとも強力な手段が、労働者およびその家族の全生活時間を資本の価値増殖に利用されうる労働時間に転嫁するための、もっとも確実な手段に一変する。

機械の導入やイノベーションは、人の仕事を楽にするどころか、全生活時間を資本の価値増殖のための時間に転換してしまう装置なのだというわけです。

皆さんの会社でも、新しいシステムを導入したはずなのに、なぜか前より残業が増えているといったことはありませんか?
これこそまさに、生活時間が労働時間に転嫁されているということです。

この部分を読んで、私は「なるほどな!」と深くうなずいてしまいました。
一方で、こういう疑問を持ちました。
マルクスが言うような、生産性を向上させる、いわゆるプロセス・イノベーションではなく、新たな価値を顧客に提供するプロダクト・イノベーション資本論的にどう考えたらいいんだろう?
マルクスの言う無限のイノベーション競争から抜け出すために、プロダクト・イノベーションが必要ということなのか?答えはまだ出ていませんので、引き続き考えていきたいと思います!

②資本主義社会=商品による商品の生産が行われる社会

マルクスは「資本論」の中で資本主義社会を分析しているのですが、明確に「資本主義の定義はこれだ!」という形で述べてはいません。これについては、本書の著者が「資本論全体を読むと、こういうことだろう」という定義を、次のようにまとめてくれています。

「物質代謝の大半を商品の生産・流通(交換)・消費を通じて行う社会」であり、「商品による商品の生産が行われる社会(=価値の生産が目的となる社会)」

物質代謝とは、物を入れたり出したりして生命を維持することです。例えば生き物は食物を食べて栄養を吸収し、それを排出することで生きています。
このプロセスの大半が商品を経由してできているとはどういうことでしょうか?
例えば、私たちはスーパーで野菜を買ってきて食べています。この野菜を作るためには、野菜の種や肥料、トラクターなどの設備、土地やそこで働く労働力が必要です。そして、これらはすべて市場で売買される商品です。つまり、商品を作るために商品が必要なのです。

さらに言い換えると、資本主義は「土地」と「労働力」が商品化された社会ということができます。

③資本主義が始まる条件は?

マルクスは資本主義社会は必然的なものではなく、歴史的な背景によって偶然に生まれた社会体制の1つでしかないと述べています。

本書では、資本主義が始まる条件(これを本源的蓄積といいます)として、次のように紹介されています。

①貨幣・生産手段・生活手段の所有者

②労働力の販売者である自由な労働者

が出会うことこそ、資本主義の始まる条件である、とマルクスは考えます。

さて、この「自由な」という言葉には二重の意味があります。それは、①身分制から解放されている、②生産手段を持たない、ということです。封建制において領主の私有物だった農民は、近代化によって身分制から解放されると同時に、農地からも追い出され、生産手段を奪われました。その結果、都市の工場で自分の労働力を販売して生計を立てるしかなくなり、これが資本主義が始まる条件となったのです。

本書ではこれを、「就活生」に例えており、この例えが秀逸に感じたので、紹介します。
就活生は職業選択の自由が認められており、自分の就きたい職業を自由に選ぶことができます。一方で、生産手段を持たないため、自らの労働力を企業に販売することで生きていかなければなりません。つまり、就活生は①②の条件を共に満たす労働者予備軍であり、筆者曰く就活とは、「労働力商品の買い手を探すこと」なのです。

まとめ

いかがだったでしょうか?
本書を読んで私が一番感じたことは、資本主義社会である以上労働者は搾取され続ける運命にあるのであれば、自由を得るためには資本の側に回らなければならないということです。

例えば、最近よく耳にする「働き方改革」は、労働者のための善意の施策などではなく、資本側が搾取する相手(労働者)を減らさないための救済措置である、と本書では書かれています。

資本主義の矛盾が随所に現れ始めた今だからこそ、改めて「資本論」を学ぶ意義があると思いますので、皆さんもぜひ本書を手に取ってみてください。今までにない視点で社会を見ることができると思います。
私も再度、「資本論」の原著に挑戦してみたいと思います!

 

【書評】ワクワクするビジョンを作ろう!【ビジョナリーカンパニーZERO】

今回ご紹介する本は、ジム・コリンズさんの『ビジョナリーカンパニーZERO』です。

 


書店で平積みにされていることも多いので、お目にかかったことがある方も多いのではないでしょうか。

この本は、著者が1992年に発行した『ビヨンド・アントレプレナーシップ』という本に新たな視点を加筆したリニューアル版です。『ビヨンド・アントレプレナーシップ』の共著者であり、著者の人生のメンターでもあるビル・ラジアーさん(2004年に死去)の教えを改めてこの世に残したいという思いから書かれた本です。

 

どんな本なの?

本書には、ゼロから事業を生み出し、偉大で永続的な企業をつくるための方法や、起業家が持つべきメンタリティについて、リーダーシップ、ビジョン、戦略、イノベーションなど、様々な面からに書かれています。

一方で、様々な業界の偉大な企業だけでなく、国や軍隊などの組織を率いた偉大なリーダーの事例がたくさん紹介されており、読んでいてモチベーションが上がる本だと思います。

こんな人にオススメ!

本書には企業経営やマネジメントの基本について、かなり網羅的に書かれているので、初めて勉強される方には、かなりためになる本なのではないかと思います。

ですが、個人的には目新しい内容はそこまで多くはない印象だったので、ある程度、経営理論や経営学をかじったことがある方は、同じような印象を持たれるのではないかと思います。

ということで、本書は次のような方にオススメです!

  • 企業経営やマネジメントの基本を一通り知っておきたい方
  • 経ビジネスに対するモチベーションを高めたい方
  • 起業家を目指している方

心に響いたポイント

では、個人的に心に響いたポイントを紹介していきます!

➀夢を実現するためには…?

本書の第1章は、『ビルと私の物語』というタイトルで、著者とビル・ラジアーさんの出会いから別れ、その中で著者が得たものについて書かれています。
第1章の中に、次のような一節があります。

ほとんどの人が大胆な野心を遂げられないのは、決定的タイミングですべてを捨てて取り組まないからだ、とビルは考えていた。(中略)決定的なタイミングにすべてを捨てて飛び込まなければ、夢を実現できる可能性は低いどころかゼロになる。

僕はこの文章を読んだとき、思わず深くうなずいてしまいました。
ビル・ラジアーさんは元々、一流会計事務所の公認会計士としてキャリアをスタートさせました。しかし、パートナーに指名される直前に会社を辞め、居心地の良さや安定を捨てて、起業家になるという自身の夢を追うことを決断しました。

実は僕も、現在お世話になっているメンターの方から似たような話をされたことがあります。
その方は人生をサッカーに例えて、「人生には何度か絶好のパスが送られてくる。けど大半の人はそれを決められないどころか、パス自体に気付かないことも多い。」と仰っていました。
本当にその通りだと思います。ここだというタイミングを見逃さず、パスが来た時にどんな汚い形でもゴールに押し込める力を磨き、全てを捨てて飛び込む勇気を持ち続けたいと思います。人生は1度。どうせならやりたいことをやり切っていい人生を送りましょう!

➁ビジョンの3要素

本書には、会社を率いていく上で最も重要なことは、ビジョンを生み出し、社員と共有することだと書かれています。

ここまでは、どんな経営の本でも大体書かれていますが、本書ではそのビジョンの策定方法まで具体的に書かれています。ここまで踏み込んで書いている本はなかなか無いのではないでしょうか?
具体的には、ビジョンは次の3つの基本要素で成り立っているとしています。

  1. コアバリューと理念
  2. パーパス
  3. ミッション

1つ目のコアバリューと理念とは、組織を動かす根本原則や信条を体系化したもので、「指針となる哲学」ともいうものです。組織のリーダー個人の価値観や理念の延長でもあります。
次に2つ目のパーパスとは、その企業が存在する根本的理由です。決して完全に実現されることはありませんが、企業の道しるべとなる星のようなものです。
最後にミッションは、明快で説得力のある全体目標を指します。バリューやパーパスを実現可能な目標に落とし込んだもので、達成するたびに次のミッションを設定します。

この3つの要素を組み合わせてビジョンを明確にすることで、従業員のやる気や一体感を引き出すことができ、意思決定の指針にもなります。
そのためには、現在会社が行っていることについてただ述べるだけのような、ありふれた言葉ではなく、従業員がワクワクするような言葉で表現することも重要です。

私も以前勤めていた会社のビジョンを思い出してみましたが、思い出せませんでした。思い出せないということは、それほど魅力的ではなかったのでしょうし、周知もされていなかったのでしょう。
日本の企業は特に、言葉だけは綺麗に取り繕って、実態が伴っていなかったり、従業員に浸透していなかったりということが多いように思います。
それでもこれまでは年功序列賃金、終身雇用といった家族主義的経営のおかげで、従業員をまとめていたのでしょうが、今はもうそんな時代ではありません。日本も会社の在り方を考え直す時期に来ているのだなと考えさせられました。

イノベーションを起こす組織づくり

偉大な企業を作るためにはイノベーションがとても重要です。一般的にイノベーションには、アイデアプッシュ型と市場プル型があるとされています。ビジネススクールでは伝統的に、市場ニーズを把握し、それに合致したイノベーションを生み出すべきだという市場プル型の重要性が教えられています。
しかし、画期的な製品の多くは、実はアイデアプッシュ型で生み出されているのです。考えてみれば、顧客からは「こんな機能があったらいいのに」とか「こういうデザインだったらいいのに」といった、既存の製品の延長のアイデアは出てきますが、アーキテクチャを抜本的に変えるようなイノベーションのアイデアは顧客から生まれようがないのです。

ちなみに、実績のある企業が既存の顧客の要求ばかりに基づいて製品開発を行うことで、破壊的なイノベーションに対応できず衰退していくことを「イノベーションのジレンマ」といいます。

つまり、世界を変えてしまうようなイノベーションは自分たちの頭で生み出すしかないのです。そのためには、従業員がクリエイティブな能力を伸ばすような教育を行い、イノベーションが生まれやすい環境を作っていくことが重要になります。

最後に、ソニー創業者の盛田昭夫さんの言葉を引用したいと思います。

私たちは大衆に何を望むか尋ねるのではなく、新たな製品で大衆をリードしている。膨大な市場調査をする代わりに、製品を磨きあげ、大衆を教育することを通じて市場を生み出している。

この「大衆を教育する」という考え方、すごく心に響きました。

まとめ

本書を読んでリーダーシップとはどのようなものか、企業経営の考え方の復習にもなり、今後コンサルをしていく上で参考にしたい部分もありました。

また、イノベーションについて書かれた本を読んで勉強したいと思いました。いつか会社を起こしたいという野心を持った方は、ぜひ本書を読んでみてください!

【書評】SDGsは生ぬるい?【人新世の「資本論」】

今回は、2021新書大賞にも選ばれた、斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』をご紹介したいと思います!

私とこの本の出会いについてですが、実は特別この本が読みたかったというわけではありません。年始に実家に顔を出した際、帰り際に父親から「これ、貸したるわ」と言って手渡されたのがきっかけでした。
その後、しばらく放置していたのですが、新書大賞に選ばれた本であることや、経済学の視点から環境問題を取り扱った本であることから興味を持ち、読んでみることにしました。

それでは、内容の方に入っていきましょう!

 

どんな人にオススメ?

皆さんはSDGsという言葉をご存知でしょうか?
知らない方のために簡単に説明すると、SDGsとは、日本語で「持続可能な開発目標」と言われ、持続可能でよりよい世界を目指すために定められた国際目標で、17のゴールから構成されています。最近はSDGsのゴールを目標として掲げている企業も増えてきましたので、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
そして、SDGsの背景には「経済成長」と「環境危機の解決」を両立しようという考え方があり、「気候ケインズ主義」と呼ばれています。

しかし、著者は気候ケインズ主義のスタンスでは環境危機を解決できないと批判した上で、経済成長は諦めて「脱成長」を目指すべきだとし、本書の冒頭で次のような衝撃的な言葉を述べています。

かつて、マルクスは、資本主義の辛い現実が引き起こす苦悩を和らげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判した。SDGsはまさに現代版「大衆のアヘン」である。

つまり、SDGsは問題を先延ばしにするだけの甘い誘惑にすぎないと言っているのです。
確かに、近年のSDGsのごりゴリ押しっぷりを見ると、どうも綺麗事で済ませようとしている雰囲気を感じざるを得ません。

ということで、本書は次のような方にオススメです!

  • SDGsってなんか綺麗事に感じるんだよな〜」と斜に構えて見ている方
  • 今後、地球の破滅を防ぐには、どう行動すればよいかを真剣に考えたい方
  • 経済学やマルクスの考え方に興味がある方

どんな本なの?

前述の通り、著者は既存の資本主義の枠組みでは、目前に迫っている環境危機を解決することはできないと述べています。では、どうするのか。

ここで登場するのが、マルクスの「資本論です。一般的にマルクス主義と言えば、ソ連や中国の共産党による一党独裁と生産手段の国有化など、時代遅れで、危険なものというイメージが強いと思います。
しかし、著者は最新のマルクス研究の中で、マルクスが晩年にたどり着いた「脱成長コミュニズム」という考え方を発見し、これこそが環境危機を解決するカギであるとして、この考え方に基づいて私たちが起こすべき行動を提示しています。

数百年も前に生きたマルクスは、資本主義を続けた先に待つ未来を予言し、その解決策まで提示してくれていたという事実には、びっくりさせられますよね!

では、ここからは、特に個人的に心に響いたポイントに絞ってご紹介していきます!

心に響いたポイント

①私たちの生活は途上国の犠牲の上に成り立っている?

現在先進国に住む私たちは、対価さえ払えば欲しい物は何でも手に入れられる、大量生産・大量消費を前提とした資本主義の世界で生活していますが、これが途上国の犠牲の上に成り立っていることを、普段意識できているでしょうか?著者は、次のように述べています。

中核部での廉価で、便利な生活の背後には、周辺部からの労働力の搾取だけでなく、資源の収奪とそれに伴う環境負荷の押しつけが欠かせないのである。

このような、途上国からの資源やエネルギーの収奪に基づいた先進国のライフスタイルを「帝国的生活様式」といいます。

例えば、作物の生産について考えてみます。途上国では自国の経済成長のために、自分たちが食べる分の作物よりも、先進国で「売れる」輸出用の高品質な作物を優先して栽培します。その際、高価な農薬も自分で買わなければなりませんし、自分たちの食べる分の作物はほとんど作れません。
また、労働者は過酷な労働を強制され、先進国が求めるスピードで栽培するために、土地を休ませることなく、土地の栄養分を搾り尽くすような生産が行われます。こういった状況が、近年、様々な現象や、事件や事故となって表出してきているのです。

こうした先進国による負荷の押し付けを「外部化」といい、資本主義は見たくない不都合な現実を、あえて周辺部に押しやって見ないようにしてしまうのです。

いかがでしょうか?私も読んでいて、心にグサグサ突き刺さるものがありました。

②地球全体をみんなで管理する

 それでは、不公平な外部化社会を是正し、みんなが平等に資源を使い合う、環境にやさしい社会を作るにはどうしたら良いのでしょうか?

そこで登場するのが、「脱成長コミュニズム」です。「脱成長コミュニズム」とは、簡単に言うと、経済成長を目指さず、生活に必要なもの、引いては地球全体をみんなで管理する社会です。

共同体で管理する対象を「コモンズ」といいます。水や土地、さらには設備などの生産手段さえも一部の資本家が独占するのではなく、労働者の手で共同管理しようというものです。

例えば、土地について考えてみましょう。
今、都内でそれなりの家を借りようとすると、数万〜数十万の家賃がかかります。これは、土地が一部の人によって独占され、「希少性」が生み出されることによって、その「希少性」に価格がついているためです。
そこで、土地を一部の人間の独占から解放し、共同管理することにします。
すると、「希少性」がなくなり価値が下がるため、みんなが平等に低価格で家を借りれるようになります。
また、これによって労働者は、高い家賃のために働く必要がなくなるため、労働時間も減り、余暇を楽しめるようになります。
さらに、共同管理によって、一部の人間が過度に収奪を行うことを監視することになるため、平等性を担保できるとともに環境破壊も防げるようなるのです。

皆さんは「なんでお金なんか存在するんだろう?お金なんてこの世になければ、もっと幸せに暮らせるんじゃないの?」と思ったことはありませんか?私はあります。
最終的には、そんな空想は無意味だなと思い、現実に引き戻されるのですが、そんな空想を、より精緻に、より論理的に、実現可能な形で突き詰めたのが、この「脱成長コミュニズム」ではないかと思います。

一方で、現在の資本主義社会で既得権益を握っている資本家が、そう簡単に資源を手放すのかというと疑問が残ります。

また、人類の歴史は資本主義が成立する以前から、支配のための争いの連続です。よって、人間の支配したいという欲望は不滅ではないかと思います。私自身も、人から賞賛を得たい、人より優れていたい、人より上に立ちたいと言う気持ちが原動力になっていたりします。
そういった既得権益や支配欲をいかに抑え込んで、革命を起こせるかが重要なのだと感じました。

③資本主義は「希少性」を作り出すシステムである

先ほども少し触れましたが、価格や価値は「希少性」につけられます
例えばロレックスの腕時計は、「時間を見る」という機能としてはカシオの腕時計と大きな差はないでしょう。
では、なぜ高価な値段が付いているかというと、持っている人が限られており、「希少性」があるからです。高級ブランド品はその最たる例です。
つまり、資本主義こそが「希少性」を作り出すシステムなのです。
著者はこのことをすごくわかりやすくまとめてくれているので、少し長いですが引用したいと思います。
コモンズとは万人にとっての「使用価値」である。万人にとって有用で、必要だからこそ、共同体はコモンズの独占的所有を禁止し、協同的な富として管理してきた。商品化もされず、したがって、価格をつけることもできなかった。コモンズは人々にとって無償で、潤沢だったのだ。もちろん、この状況は、資本にとっては不都合である。
ところが、何らかの方法で、人工的に希少性を作り出すことができれば、市場はなんにでも価格をつけることができるようになる。(中略)
土地でも水でも、(中略)「使用価値」は変わらない。コモンズから私的所有になって変わるのは、希少性なのだ。希少性の増大が、商品としての「価値」を増やすのである。
その結果、人々は、生活に必要な財を利用する機会を失い、困窮していく。貨幣で計測される「価値」は増えるが、人々はむしろ貧しくなる。いや、「価値」を増やすために、生活の質を意図的に犠牲にするのである。
というのも、破壊や浪費といった行為さえも、それが希少性を生む限り、資本主義にとってはチャンスになるからだ。破壊や浪費が、潤沢なものを、ますます希少にすることで、そこには、資本の価値増殖の機会が生まれるのである。
気候変動が、ビジネスチャンスになるのもそのためだ。気候変動は水、耕作地、住居などの希少性を生み出す。希少性が増えれば、その分だけ、需要が供給を上回り、それが資本にとっては大きな利潤を上げる機会を提供することになる。
これが、惨事のショックに便乗して利を得る「気候変動ショック・ドクトリン」である。(中略)
「使用価値」を犠牲にした希少性の増大が私富を増やす。これが、資本主義の不合理さを示す「価値と使用価値の対立」なのである。
つまり、私たちを豊かにするためのはずの資本主義が、逆に私たちを苦しめるという本末転倒が起こっているのです。さらに、著者はこうも述べています。
私たちは、十分に生産していないから貧しいのではなく、資本主義が希少性を本質とするから、貧しいのだ。

資本主義は富を生み出すシステムなんかではない。欠乏を生み出し、人間の欲望を駆り立てるシステムなのだ。つまり、このシステムを根源から断ち切ることで、環境危機を食い止めていこうというのが、本書の主張になっています。

まとめ

いかがだったでしょうか?現在の日本人は、おそらく生まれた時から資本主義の社会で生活しており、それ以外の社会を知りません。私も今の社会が当たり前で、普通なのだと思って生きてきましたが、当然海外には社会主義の国もありますし、昔は資本主義が当たり前ではない時代もあったはずです。この本を通じて、改めてより良い社会を模索する必要性を感じました。
他にも色々とご紹介したい部分があるのですが、長くなってしまうので、この記事ではこれくらいにしておきます。是非本書を通じて皆さんもよりよい社会について、考えてみてはいかがでしょうか?

【書評】全ての働く人にオススメしたい本!【転職の思考法】

今回は当ブログの記念すべき1本目の記事ということで、僕の人生にかなり大きな影響を与えた北野唯我さんの転職の思考法』という本を紹介したいと思います。

 

会社勤めをしている人なら誰でも1度は「ここは自分の居場所じゃない」「仕事にやりがいを見い出せない」と思ったことがあるのではないでしょうか?
僕もその1人で、入社式の日から転職サイトを見ていたくらいです笑。その後11年間その会社で働きましたが、「何か違うな〜」という思いをずっと抱えていました。本書は、そんな漠然とした思いを解消してくれる本になっています。
また、働く意味を再確認させてくれる本でもあるので、現状に不満を持っている人だけでなく、全ての働く人にオススメできる内容となっています!
『転職の思考法』というセンセーショナルなタイトルから、一見「うっ」となってしまいそうですが、ぜひ今回の記事を通して興味を持っていただけると嬉しいです。

 

『転職の思考法』はどんな本?

転職に必要なのは「情報」でも「スキル」でもなく、確かな「判断軸」である。

本書の帯にはこのような1節が書かれています。
日本は長らく低成長の時代が続き、終身雇用制度が崩壊しつつあります。定年まで全ての社員の面倒を見る余裕が、企業にもなくなってきています。

にもかかわらず、多くの企業はスキルアップの機会を社員に十分に提供せず、その結果転職市場で勝負できない人々を大量に生んでしまっているのです。

そんな時代にあって、私たちに必要なのは「いつでも転職できる」と確信できるだけの市場価値を身につけることです。そうなることで初めて、あなたは単なる労働力ではなく、会社と対等な立場で取引できるようになるのです。そのために必要なのは、うわべの「転職情報」ではなく、情報を見極める「思考の軸」です。

本書は、そんな「思考の軸」について、ある30代の印刷機器メーカーの会社員を主人公としたストーリー調で、読みやすく紹介してくれています。

特にこんな人にオススメ!

全ての働く人にオススメできる本ではありますが、以下の人には特にオススメです!

  • 今現在、自分の仕事に満足できずモヤモヤしている人
  • 就職活動を控えている学生

心に響いたポイント

ここからは個人的に心に響いたポイントを紹介していきます。

①自分の市場価値は〇〇〇で決まる!

まずは自分の市場価値についてです。皆さんは自分が市場でどれだけの価値があるのか、普段から意識して仕事をしているでしょうか?「いつでも転職できる」状態になるためには、普段から市場価値を意識し、高めるような働き方をすることが重要です。

本書では、市場価値を以下のように定義しています。

マーケットバリューは①技術資産、②人的資産、③業界の生産性の三つで決まる

それぞれ具体的に説明していきます。

まず、①技術資産とは、どんな会社でも必要とされる、価値のある技術を指します。例えば、会計のスキルやエンジニアのスキルなどです。営業や経理などの職種に近いものや、事業部長、プロジェクトマネージャーの経験といった、職種に紐つかない技術も含まれます。

次に、②人的資産とは、端的に言えば人脈です。ただし、その会社の中だけで通用するようなものではなく、例えば自分が会社を辞めたとしても、仕事をくれるような人脈。それを人的資産と言います。

最後に、③業界の生産性ですが、市場価値はこの業界の生産性に最も大きな影響を受けます。例えば①技術資産や②人的資産が全く無くても、安定して高い給料をもらっている人達が身近にいませんか?例えば金融業界や商社、コンサルなどで働いている人たちです。こういった業界で働いている人たちは、いわば「場所選びで勝った人達」と言えます。

僕は今まで会社に勤めていて、自分の市場価値なんて考えたこともありませんでした。本書を読んで、自分の市場価値を改めて考えてみると、技術資産・人的資産はほとんど無く、業界も縮小しており、市場価値がほとんど無いことに衝撃を受けました。

「このまま定年まで会社にしがみつくしかない人生なのか?それでいいのか?」

そんなな想いを抱くようになりました。

②パートナーへの相談は「共感」が重要!

本書では、実際に転職を決める段階での、人生のパートナーへの相談の仕方もフォローしてくれています。実際、結婚して家族がいると、転職は自分1人の問題ではありません。特に男性と女性では考え方が違うことも多いです。パートナーへの相談は軽視されがちですが、今後の協力を得る意味でも非常に重要な要素です。
本書ではパートナーが転職に反対を示したときに必要なこととして、以下の3つを挙げています。

  1. ロジックを固めること
  2. 共感してもらうこと
  3. 最後は信じてもらうこと

そして、次のような言葉が書かれています。

誰よりも会社のリアリティを知っていて、仕事にコミットしている人物、それは転職する本人だ。なぜ、転職が必要で、なぜ、今の会社ではダメなのか。本人がいちばん知っている。いちばん不安なのも、本人だ。それでもなお、決断するだけの理由があったから転職するのだろう?(中略)つまり『誰よりも実態を知っていて、誰よりもコミットしている人間は誰か』が重要なんだよ

意思決定とは、いちばん情報を持っていて、いちばんコミットしている人間がやるべきなんだ。本人にしかわからない部分がある。だったら最後は信じるしかない。

僕も会社を辞めるとき、既に結婚しており、生活を共にする妻がいました。
私が特に説得の際に感じたのは、「自分が不安な素振りを見せたら絶対にダメだ」ということです。
自分が不安なのはもちろんですが、何もわからない相手はもっと不安なはずです。そんな中で、「大丈夫か不安だけど、転職したい」なんて言ってしまったら、絶対に相手は納得してくれないでしょう。
自分の不安は押し殺して、相手の信頼を得る。これはなかなか辛い作業でした。
ですが著者が言うように、最後は「俺を信じてついてきてくれ」しかないと思うのです。

パートナーへの説得に頭を悩ませている方にも、ぜひ本書を手に取ってもらえたらと思います。

③「やりたいこと」なんて必要ない

さて、本書で僕が最も心に響いたのがこの部分です。著者は、どうしても譲れないほど『好きなこと』などほとんどの人間にはないし、必要ないと述べています。そして、人間には以下の2パターンがいると言います。

・to do(コト)に重きをおく人間…何をするのか、で物事を考える。明確な夢や目標を持っている。

・being(状態)に重きをおく人間…どんな人でありたいか、どんな状態でありたいかを重視する

そして、99%の人間はbeing型であり、世の中に溢れている成功哲学は1%しかいないto do型の人間が書いたものなので、参考にしても彷徨うだけと述べています。

これを読んで僕は、すごく気持ちが楽になった気がしました。皆さんはいかがでしょうか?
僕は就職活動の時、特に好きなことややりたいことが無いのがコンプレックスでもありました。でも著者はそれでいい、それが普通だと言ってくれているのです。

そして、being型が『好きなこと』を見つける方法も紹介した上で、以下のような言葉を述べています。

これからの時代にどんなやつが強いかわかるか?それは個人として『ラベル』を持っているやつだ。『ラベル』とは、自分だけのキャッチコピーのようなものだ。組織が、個人を守ってくれる時代は終わった。いつ会社から放り出されるかわからない。そのときにひとつでもいいから個人としての『ラベル』を持っていないと、君は完全なコモディティになる

大事なのは、仮でもいいからそのラベルを自分でつけること。(中略)そうしたらそのラベルがより強固になるように仕事を選んでいけ

この文を読んで、これからの時代個人として認められること、発信できることがいかに重要なのかということを学びました。
僕がブログを始めたのも、この一文がきっかけだったりします。

まとめ

私はこの本を読んで今後の自分のキャリアについて考えさせられ、転職ではないですが、独立という形で、勤めていた会社を辞めるという決断をしました。
年収も大きく落ち、働く時間も長くなりましたが、スキルを伸ばせる仕事ができて精神的には充実していますし、将来的には会社にいる時以上の稼ぎを得るという目標がモチベーションになっています。

今回は紹介しきれませんでしたが、本書には、この他にも心に響く言葉がたくさんあります。コロナ禍で自分の時間が増えている昨今ですが、この本を通じて改めて自分のキャリアを見つめなおすきっかけにしてみてはいかがでしょうか?

なお、現在は漫画版も出ているみたいです!